黒田 教行 越雲くん、お久し振りです。

越雲 龍馬 お久し振りです。

黒田 この間の、nest振りだよね。

越雲 はい。CALENDARSのレコ発以来ですね。

黒田 すいませんね、なんか終わった早々楽屋に呼び出して、散々俺のライブのグチを聞かされるという。

越雲 そうですね(笑)。いやでも、楽しかったです。

黒田 ありがとうございます(笑)。

ーーー


黒田 polly、2016年7月13日に発売される、2ndミニアルバム。

越雲 『哀余る』です。

黒田 これ僕の自慢なんですけれども、越雲くんがすぐに聴いてもらいたいということで、先行的に聴かせていただいておりまして。ほぼ全曲解説くらいな感じで掘り下げて聴けたらなと思っているんですよ。

越雲 はい。お願いします!

黒田 聴きながらさ、色々話していこうよ。

越雲 はい。是非!

黒田 宇都宮ちょいちょい帰って来てるの?

越雲 いや、最近ちゃんと帰って来れてないですね。帰って来たいとは思ってるんですけど。なかなかタイミングがなくて。

黒田 越雲くん......龍馬くんって言った方がよかった?

越雲 いや、越雲でだいじょうぶです。

黒田 ハハハ(笑)。なにそれ。

越雲 いや、いつも越雲って言ってるじゃないですか、カズさん。

黒田 越雲くんね。“くん”って言ってるでしょ、俺。

越雲 いや、日によって、てんでバラバラですよ。

黒田 あホント?

越雲 はい。日によって扱いが違うみたいな。多重人格みたいな(笑)。

黒田 いや、やめてよ、、全然そんな事ないから(笑)。

越雲 ハハハハハ(笑)。

黒田 どうなのよ。この2ndミニアルバムの出来映えというか、自分的な手応えは。

越雲 やっと、やりたい音楽に足を踏み入れられてきたな、という作品ですね。

黒田 んん!

越雲 今後の自分のマインドをどんどん音源化していきたい中で、やっとスタートに立てたような。なので、ファーストミニアルバムみたいな感じですね。僕の中では。

黒田 なるほど。自分が頭の中で想像したり、生み出してきたメロディの原石みたいなものとか、フレーズだったり、最終的にこういう形に持って行きたいなってものを、ようやくpollyってバンドのグルーブの中でアウトプット出来るようになってきたと。

越雲 ずっとこういうのやりたいって言ってたんですけど、なかなか出来る環境に、メンタル的にも技術的にもなくて、今まで。やっと、なんか出来そうだなと思って。

黒田 結構悩んでたよね。去年の今頃かな?

越雲 そうですね。このバンドでやっていける自信がなかったんですよね。1stをリリースしてすぐの時とか。

黒田 秋祭り(※1)くらいの時には開けたんだよね。“ようやく解ってきた気がします”って言って。

越雲 そうですね。

(※1)2015.09.27 SLIP STREAM 秋祭りフリーライブ

ーーー

 

01. 沈めてくれたら

黒田 この曲は昨年のワンマンライブでもやってましたよね。

越雲 そうですね、1曲目にやりました。

黒田 あの日のライブの感想を越雲くんに一切連絡出来なかったんですけど。。

越雲 はい。

黒田 すぅーげー良かったです。

越雲 あ、ほんとですか!よかったぁ。

黒田 めっっちゃ良くって。バケモンみたいなバンドになっちゃったなって。

越雲 いやいや、全然ですよ、、

黒田 この〔沈めてくれたら〕を一発目に聴いた時、“あ、越雲くんこっちに行ったんだ”っていう印象は受けたのよ。俺的に。

越雲 なるほど。

黒田 “そうなんだぁ”、と思いながら、後半に向かって観てたんだけど。ま、元々聴いているバリエーションも豊かじゃない。

越雲 そうですね。

黒田 それをちゃんと自分のフィルター通して、pollyっていうバンドの中でちゃんと形にしているなーって、とても思って。感動しました。

越雲 ありがとうございます。

黒田 毒々しいシューゲイザーの要素もしっかりあるんだけれども、それから入ってくる歌い出し、Aメロの感じっていうのが、フィッシュマンズにも通ずるような浮遊感みたいなものとか、日本人にしか出せない独特のメロディラインみたいなものもちゃんとあって。だけどJ-POPって感じではないんだよね。

越雲 あぁー。

黒田 洋楽を聴いてる日本人が、誇れる日本人が好きなメロディ、ややこしいんですけど。質の高い、和製メロディを練って練って作ったんだなっていう。“パッ”って出てくるものじゃないと思うんだよね。

越雲 そうですね。メロディは4パターンぐらいあって。それを組み合わせて一番ハマるものを形にした感じですね。

 

polly - 沈めてくれたら(MV) 映像ディレクター:番場秀一

 

02. Addict

黒田 プリプロ音源を期間限定でガッツリ公開してたじゃないですか。

越雲 はい。Sound Cloudで。

黒田 そうそうそう。ちょっと聞いときたいんだけど、どういう意図があって?

越雲 あれは、僕の中で新しいマインドになってたんですよ、もうその時期には。ライブでも新曲ばっかやってたんで。“もう新しい事やってるよ” って提示したくて。どうしても。

黒田 ふぅ〜ん、なるほどね。楽曲を世にアウトプットする事に関して、越雲くんは割と敏感というか、丁寧に扱いたいマインドだと思ってたから、“お?やったなぁ!” って。しかもそれをプリプロ音源で上げるっていうのは、勇気いるなと思ったんですよ。

越雲 そうですね、あれで勘違いされても、というか、あれが全てじゃない、という事は提示はしてたんですけれども。

黒田 良くも悪くもあんまり作り込まれてなかったじゃん。

越雲 そうですね。

黒田 プリプロ、っていう感じだったから、そこはみんな解って聴けたんじゃないのかな。

越雲 んーー、だといいんですけど。

黒田 個人的にはそのプリプロの中でもこの〔Addict〕が印象に残っていて。ただ、LINEでも越雲くんに言ったんだけど、Aメロ部分の越雲くんの歌のクセが、本番で取り除かれてるといいなって思いながら聴いてたんですよ。そしたらキレーイに取り除いてくれてて。あ、“やっぱり解ってるなー、この男!”って感動したっていう。

越雲 CDに関しては歌にクセなんていらないと思ってるので僕は。歌も楽器なので、僕の中では。まぁ、歌は歌で聴きたいって人もいると思うんですけど...

黒田 声質自体が個性だと思うし。そのマインド俺も似てて。俗に言うエモじゃないから、CALENDARSにしてもpollyにしても。言葉にメロディが乗っかってるだけで、普通に言葉を発する以上のものになってるわけじゃん。そこに自分の個人的な感情を乗っける、ってとこには俺も違和感を感じているっていうか。それはそれで形としてアリだとは思うけど、それとはやり方が違うっていうか。より音楽として聴いてもらう、っていう事に関しては、こっちの方が理に適ってるのかなって思うよね。

越雲 そうですね。

黒田 これもLINEで話したんだけど、俺も大好きな「ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート」というバンド。お互いに好きなバンドなんですけれども。

越雲 はい。

黒田 そこのエッセンスもチラッと感じて。

越雲 チラッとですかね(笑)。

黒田 ハハハハハハ(爆笑)。でもちゃんと自分らの曲になってるからさー。真似事っていう感じじゃないんだよね。

越雲 どおなんですかね、真似していいと思うんですよ、音楽って。カズさんに“これ好きでしょ?”って言われれば好きです、真似してますって言えるし。結局真似じゃないですか、楽器弾いて歌ってる時点で。

黒田 良いと思ったものは、ちゃんと自分のフィルターを通して。

越雲 もし僕らの曲聴いて、ペインズを好きな人が聴いてくれてたとして、嫌いな人も居るわけで。逆も然り。それはもう受け取り方の自由であって、僕が何真似しようが、聴いている人が何好きだろうが、作品には変わりないと。賛否両論あると思いますけど。

黒田 逆に、殆どの人が解らないと思うし。この会話を聞いて、“越雲さんが言ってたペインズって何だろう?”って広がってく人が居ていいじゃない。俺も実際そうだったし。ちゃんと凄く良い形で自分のフィルター通して、アウトプットしてるな、っていう印象ですよ。

越雲 よかったです。

黒田 “まんま”じゃないから。“まんま”は違うと思うけど。

ーーー

 

黒田 今回、歌が凄い、いい。

越雲 ほんとですか。

黒田 うーーん!

越雲 良かったぁー

黒田 実際レコーディングはどうだったの?

越雲 歌はそこまで録り直してないかもしれないです。

黒田 ほんとぉ!

越雲 全体通してはそんなに時間かかってないかもしれないですね。ミックスだけすごい時間かかってますけど。録る事にはあまり時間かけなかったですね。

黒田 ミックスは結構拘ってるっていうか、エンジニアさんとは上手くいってた?

越雲 やりやすかったです、今回。

黒田 因みにレコーディングスタジオは何処だったんですか?

越雲 下北沢のHMCってスタジオです。never young beachとかも録ってるとこで。

黒田 はいはい。エンジニアさんも?

越雲 はい。

黒田 曲によって声の奥行きとか、ボリュームのバランスから何から違うんで。

越雲 そうですね。

黒田 面白いなーと思って。ちゃんと1曲1曲、全体を通して同じバランスじゃないから、凄いな、と思いつつもエンジニアさん大変だったろうなって(笑)。

越雲 ハハハ(笑)。

黒田 マスタリングもこのバランスだと大変だったろうなと思ったんですけど。

越雲 マスタリングも立ち会って、もう、“ご迷惑をお掛けしました。” っていうかんじですね。

黒田 あほんと。マスタリング難しいからねー

越雲 でもあれ大事ですよねー

黒田 大事だねー

越雲 今流行のミッドによせてボンっていうのはイヤたったんで、キレイに、音を上げても綺麗に聴こえるような音楽にしたいなと。

黒田 あんまり音量上げてないのに“耳のココがちょっと痛い”とか、随分ハリあるなぁ、っていう音源が最近増えてるよね。

越雲 そうですね。

黒田 それで最近疲れちゃうんだよね。俺時代遅れなのかなって自己嫌悪に陥るという...

越雲 どうなんですかね。僕もそれがイヤなんで。カズさんと同じような感じかもしれないです。凄くイヤなんですよね、嫌らしいというか。ああいうのってもう芸術作品じゃないって思ってるんですよ。

黒田 あれってスマホとかで聴いた時に綺麗に聴こえるのかな。

越雲 あー、それはマスタリングエンジニアの方も言ってたんですけど、パソコンとかスマホとかでも聴く、もう殆どコンポとかじゃ聴かないじゃないですか、スピーカーで。あーゆー物に一番適応してるやり方みたいですね。

黒田 あー、そーなんすね。。
じゃあ、ミックスもマスタリングも、今回は前作以上に納得のいくものになっている?

越雲 そうですね。自己責任っていう言葉が今回スローガンだったんで。言いまくって言いまくって、自分に後悔がないようにしようと思って。

黒田 それをレーベルと制作スタッフ側が呑んでくれてるからいいね。

越雲 あー、そうですね。多分、諦めてるんじゃないですかね。違うって言われても、違うんだったらやりたくないって言っちゃうんで。俺の事面倒くさいな、って思ってやってくれてるし。そこまで制作には気を遣わず自分で良いと思ったものを提示してるので、今のところ良いバランスでやれてるような気がします。

黒田 なるほど。


03. ひとのよう

黒田 この〔ひとのよう〕。〔Addict〕がBPM高めと思ったら、次の曲も高めだったという。

越雲 そうですね。

黒田 意表を突かれて、“あれ、これ後半にかけてどうなっていくのかな?”って思わせてくれるポジションのこの楽曲。どんな感じなんですか?

越雲 いままでのテイストも残しつつ、

黒田 そうだね。

越雲 サビでいい意味で裏切れるような曲になっているような。

黒田 サビ、いいね。

越雲 拘りましたね。

黒田 シンプルだけど、ずっと聴いていられるというか。気持ちいいよね。

越雲 そうですね。

黒田 俺ニヤッとしちゃったもん。

越雲 ハハハ(笑)。割と・・・サビ以外聴かなくてもいいぐらいの。

黒田 ハハハハハハ(笑)なーんでそーゆー事言うのぉ(笑)。そんなことないよ、言葉遊びもすごいキレイだし。気持ちがいい。

越雲 いやー、でもサビだけ聴いてくれれば、この曲は報われるような。

黒田 ほんとぉ(笑)。後半のやんすのギターもいいね。大サビの部分の鳴り方も気持ちいいな。

越雲 そうですね。

黒田 何のエフェクター?

越雲 コーラスか、フェイザーを、

黒田 短くかけるんだ。

越雲 あとはディレイをちょっとミックスして。

黒田 なるほどなるほど。音の変え方とか越雲くんがディレクションする感じ?

越雲 そうですね。やんすはディレイが大好きなので、ディレイで跳ばすなよ!っていう今回のコンセプト(笑)。

黒田 なるほど(笑)。

越雲 僕、ギタリスト結構好きなんですけど、エフェクターいっぱいあるギタリストが好きなんですよ。

黒田 pollyはふたりともエフェクターいっぱいあるな、ってイメージだけども。

越雲 でもあれ最小限ですよ。

黒田 マジで。

越雲 やんす、なんでギタリストなのにもっと増やさないんだろって。

黒田 もっとあればいいのに、って感じ?

越雲 これ買った方がいいって言ったりとか。僕が提示して買ってもらう事が多いですね。

黒田 一緒に楽器屋に行ったりするわけ?

越雲 たまーに。僕も、やんすが弾くギターで聴いてみたかったりするので。自分の耳で聴いていいと思った物を導入したいっていう。

黒田 うしろで鳴ってるフレーズとか、こういう音出して欲しいっていうのは頭の中で鳴ってるわけ?

越雲 そうですね。最初から“このエフェクターだ” っていうのはあります。

黒田 因みになんだけど、越雲の足もとの歪みエフェクターって何個位あるの?

越雲 歪みは1、2、、…5個です。

黒田 5個もあるの?

越雲 あ、ファズ含めたら6個です。

黒田 凄いねぇ!

越雲 曲によって細くしたり、太くしたり、わざと引っ込ませたりしたり。あと、ブースターによってもゲインブースターと音量上げるブースターと分けたかったりするので。

黒田 後ろと前と違うしね。

越雲 はい。

黒田 なるほどー。。。凄いね。ギタリストのボーカリストなんだね。

越雲 そう…かもしれないですね。ギターが好きなんですよね。

黒田 音色を変える事が好き、なんだね。

越雲 そうですね。

黒田 宇都宮の宝ですね。宇都宮の今までのボーカリストなんて、足もと何も無いですよ(笑)。その黒歴史は黒田が作ってしまったっていう…

越雲 ハハハ(笑)。

黒田 すごい罪な歴史を僕が作ってしまったんですけど。。。マーシャル直アンでしょ!直アンかボリュームペダルでしょ!っていう。

越雲 多いですよね。

黒田 そこをちゃんとしよう、って思ったきっかけって何だったの?

越雲 シューゲイズバンドは結構前から好きで、まずエフェクターが多い事にカッコイイっていう風な入りですね。そこから色んな音源聴いて、“この曲はどんなエフェクター使ってるんだろう?”っていうので、自分もこの音出したいよ、なー!!っていう。

黒田 なるほど。今ギター何使ってるの?

越雲 ジャスマスター使ってます。

黒田 そうだ。

越雲 アームプレイがしたくて。それだけです。

黒田 うんうんうん。

越雲 いやもう、アームプレイってカッコイイじゃないですか!

黒田 アームプレイしてる曲ある?今回。

越雲 ありますよ、〔沈めてくれたら〕。

黒田 Aメロ!

越雲 Aメロと、あとデカイ音の時も、片方のパンで普通に鳴らして、片方でウゥ〜ン、下でブゥ〜ンていう。あと、〔哀余る〕でも使ってますね。

黒田 あ、そうなんだ!

 

04. 堕ちていく

黒田 これもまた結構BPM高めなんだよね。

越雲 そうですね。

黒田 因みに、ちょっと勉強させてもらいたいんですけど、デモ作りは何のソフト使ってるの?

越雲 ロジックです。

黒田 ロジック最近多いなぁ。使いやすい?

越雲 僕はロジックしか使った事ないので。中に無いものは、エフェクター使って。

黒田 すこぶるニガテなんですよね、俺。DTM...

越雲 僕は逆に、暇さえあればやってます。それしかやる事ないんですよね。

黒田 リズムパターン作りでまず俺、心が折れちゃう(笑)。

越雲 それちょっと解ります(笑)。三連とかでやると、うわ、めんどくせぇって。

黒田 どうやってやってるの?

越雲 一から打っていきますね。でも暇潰しになるので。僕みたいに外に出るのもあんま好きじゃなくて、暇をもてあましてる奴には理に適ったソフトだと思います。カズさんみたいに忙しくて凄腕店長みたいな人には出来ないですよね(笑)。

黒田 いやいや(笑)。でも、すっごい時間を勿体なく感じちゃうんだよね。

越雲 でも、使い始めてから、ドラムの事が解るようになってきて。一つずつ分解するじゃないですか。だからドラムに対して口出しして、返されても“ここはこうだ!”って細かく言える、そういう利点があります。

黒田 曲作りでメンバーとぶつかる事あるの?

越雲 あります。でもそれでムッとされても、“俺が考えてきた方が絶対、美しい” と思って。そこはもう、見て見ぬフリします(笑)。

黒田 ハハハハ(笑)。なるほど。それぞれのメンバーからのアウトプットっていうのはどうなんですか。

越雲 いいアウトプット持ってるのは、ドラムのヒデキで。彼はジャスが好きで、横ノリに対しては凄い強いんですよ。今回もミドルテンポのダンスミュージックが多い中で、彼と話してて“こういう事もあるんだ”っていう発見も多かったですね。ベースに関しては、言う事無いというか。お前喋るな位のかんじですね(笑)。

黒田 ハハハハハ(爆笑)。やんすは?

越雲 やんすはJ-ROCKですからね。哀愁漂ったり、泥臭いギターフレーズを得意とするギタリストなので。

黒田 そうだね。

越雲 今回の作品には如何せんハマらない(笑)。

黒田 ハハハハハ(爆笑)。

越雲 なので、やんすとは結構話しましたね。ここは任せるけど、ここはちょっといつもの感じ抑えようか、とか。

黒田 〔堕ちていく〕のイントロはどうだったの?

越雲 イントロは二人で考えたかもしれないですね。

黒田 〔ひとのよう〕は?

越雲 やんすに投げちゃいました。

黒田 だよね。投げたところがまんま解るね。

越雲 そうですね(笑)。

黒田 でも、それやらなかったら全く違うバンドになっちゃってたかも、今回。それが見えるから、1stアルバムからの流れが出来てるというか。

越雲 〔ひとのよう〕に関しては、やんすのフレーズが格好いいって思ってるので。あの曲はもう、やんす様様でしたね。

黒田 これ、やんす聞いてるといいね。あんま褒めないでしょ?

越雲 聞かなくて良いです。つけあがると思うんで。

黒田 ハハハハハ(笑)。なるほどー。
今、シューゲイザーというジャンルとしてやってる有名なバンドって誰なの?

越雲 マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ライド、ジザメリが王道で、あと、スローダイブ、レディオ・デプトとかですかね。最近シューゲイザーの派生が増えてきて、ウエストカストってバンドとかも格好いいですね。

ーーー

 

05. 哀余る

黒田 これをタイトル曲にしたというのは。

越雲 今回のアルバム、なんだろな、僕、作詞に関して、パーソナルなんですけどパーソナルにしてないんですよ、実は。主人公を勝手に自分の中に起てて、彼らに自分の言葉を任せたような書き方をしてて。

黒田 なるほど。

越雲 そうすると逆によりパーソナルになるという。まぁ、矛盾した話なんですけど。直接的に書くよりも、彼らに言葉を透視して作った方がより、いい、な、って思うようになって。

黒田 作品として艶が出るという。

越雲 あぁー、そうかもしれないです。

黒田 そういう印象だよね。例えば「好きだ」みたいな気持ちを、好きだって言うんじゃなくて、好きだって言わせるっていう事でしょ。そっちの方が美しいっていうか…奥行き、だよね。

越雲 そうですね。前回よりも今回のアルバムの方が、自分が聴いていて情景が出るんですよ。

黒田 自分が作った曲なんだけど、いちリスナーとして聴けるというか。

越雲 そうですね。

黒田 イメージしたものをアウトプットしたものだから、自分の好きな映画を作って、それを見ているみたいな、そういう感覚なのかなぁ。

越雲 それに近いかもしれないです。

黒田 なるほど。勉強になります、とても。俺最近それ忘れたな。そういえばそんな曲の書き方してたなって。でも意外でした。

越雲 ほんとですか。

黒田 越雲は越雲の実体験をノンフィクションで書いてるって思って。でもノンフィクションなんだろうけどね。ただ直接的に自分が言うんじゃなくて、っていうことでしょ。

越雲 そうですね。

黒田 越雲が決めたの?これをタイトル曲に。

越雲 はい。元々〔哀余る〕という曲があって、8曲が出来て、タイトルどうしようか?ってなったんですけど。「哀余る」って言葉は無いですよね。言葉にすれば「アイアマル」で、愛情のアイもあるし、色々想像も膨らむだろうし。単純に、聞いていて気持ちいいゴロというか、哀余るっていいなっていう。

黒田 8曲の中でこの曲が特別、と言う事よりも、今回自分が落とし込んだ言葉の中でもシックリきたというか。

越雲 そうですね。哀しみをもったコンセプトだと思ってるので、8曲が。そういう部分でも、その文字を入れたかったのかもしれないです。

 

06. ふつうのせいかつ

黒田 これは大分、形を変えたアレンジでまとめましたね。

越雲 そうですね。変えました!

黒田 何故またこういう形にもってったの?

越雲 この曲を世に出したいって願望もずっとあって。5年前位に書いた曲なんですけど、この曲に対してなんか、思い入れがあって。

黒田 うんうん。

越雲 どうしても世に出したいんだけども、あの頃のアレンジだと今回のアルバムには相応しくないと思って。尚且つ、こういう音楽をずっと聴いてて、ハマるんじゃないかと思い作ってみたところ、ハマったので。

黒田 なるほど。因みにこのギターソロは、やんすくんに投げた。

越雲 はい。どんぴしゃですね(笑)。

黒田 アレンジ自体は、スタジオで作ったの?

越雲 いや、アレンジは僕がDTMでカッティングから何から作って、こういうベーシックでやるから、乗ってくれと。

黒田 そっかー。ベースも自分で持ってるの?

越雲 持ってないんですけど、ベースも作れるんですよ、打ち込みで。

黒田 コードも、充てて。ベースっぽい感じに出来る?

越雲 曲によりけりです。エレクトロに寄せたい時はDTMでやりたいんですけど、グリスとかニュアンスを大事にしたい曲は、生ものというか、やっぱりベースで弾かないと。

黒田 まあね。ロジックは、MacBook?

越雲 MacBook Airなんですよ。

黒田 そこロジックを入れて、部屋で作っていると。

越雲 はい。

黒田 インターフェイスは?

越雲 安いやつですよ。スタインバーグ、2チャンネルしかないやつ。

黒田 それで出来ちゃうよね、デモ作りくらいだったら。CALENDARSは基本的に Pro Tools なんで。

越雲 Pro Tools使ってるんですか?

黒田 『Sweep』は全部 Pro Toolsで。

越雲 プロですね!!Pro Toolsなんて使えないですよ。

黒田 マジっすか。自分でデモ作る時も、Pro Toolsから作ろうとするけど、もう心折れちゃって…

越雲 本番レコーディングする時にPro Toolsあった方がやりやすいんですよね…

黒田 照らし合わせながら作るには、デモもPro Toolsの方がいいよね、って。ここにあるMacBookに入ってます。

越雲 へぇ〜。いいなぁ。ドラムパターンとか、タカヒロさんに投げちゃうんですか?

黒田 最近はDTM使ってる時間がもったいなくて、超アナログ。ボイスメモで、俺が核となるメロだったりとか、ギターのフレーズを残しておいて。この前の「We Are Here」はそれを持って、俺とタカヒロだけでスタジオ入り。

越雲 へぇ〜

黒田 それで他のメンバーが聴いた時にニュアンスがちゃんと掴めるから。ギターとドラムだけでやるって感じ。

越雲 なるほど。

黒田 最近ちょっとずつ音数も増えて来ちゃったんだけど、いいなって思う時もあれば、やり過ぎちゃって違うバンドになってきちゃうところの迷いもあって。それで最近気を遣ってるのは鳴らし方だね。音の鳴らし方と、弦の鳴らし方。そこだけで奥行きだせたらいいなーって思って。


黒田 越雲くんは今回から、シンセサイザーも。

越雲 弾き始めました。

黒田 使ってる機材は?

越雲 マイクロコルグです。

黒田 あれ音良いからね。

越雲 全然いけますね。でもあれが欲しいんですよね、ミニローグ。クラムボンのミトさんが絶賛してたやつ。何回か試奏してるんですけど、あれ欲しいですね。

黒田 あれいいよね。

越雲 音がマイクロコルグより全然良いし、音作りの幅が広がりやすいので。

黒田 俺もその製品紹介の動画とか、ミトさんが言ってるのもチェックしていて。めちやくちゃ良いよね。アナログシンセのいいところと、コルグの最新のテクノロジーのいいとこ取り。見栄えも格好いいよね。

越雲 格好いいですね。銀パネ、アルミで、裏が木になっていて。

黒田 そっかー、やっぱり見てたか。

越雲 正直、やんすにもシンセサイザー弾いて欲しいし。翼だって、竿に限らずシンセベースでもいいと思ってるので。

ーーー

 

黒田 ジャケット。今回、ちょっと意外だったんだよね。

越雲 そうですか。

黒田 意外!

越雲 今回は、デザイナーが凄腕の人で。その人に任せたら、ちょっとイメージ違うなぁ...だったんですけど、前回のイメージとガラッと変えたいっていう欲があったので。今は凄く気に入ってるジャケットになってます。

黒田 なるほどね。

越雲 暗いですよね。

黒田 暗いねぇ。

越雲 でも、暗いのが似合うんですよね、僕ら。

黒田 「哀余る」って言葉と絵のシンクロ値が高めだな、ってう印象は受けた。

越雲 シンプルにしたかったんですよね。色んなものに関して。余計なもの削ぎ落として。

黒田 いい意味で裏切ってくれる感じするけどね。例えば〔沈めてくれたら〕とこのジャケットの雰囲気って繋がってくる訳じゃない。うわっ、と吞み込まれたと思ったら、2,3,4で立て続けにBPM高めの、メロと演奏だけ聴くとダンサンブルな楽曲になってるところで、“あ、こういう振り幅もあるんだ”と。いい意味でジャケットとのバランス、アンバランスさを楽しめるのかな、って感じもするよね。

ーーー


07. 言葉は風船

黒田 越雲くんらしいようで、越雲くんらしくないような。

越雲 これ、歌詞書くのに30分位しか使ってないんですよ。だし、作品にもしようと思ってなくて。

黒田 今、30分で書いたって聞いて納得したんだけど、逆に時間かけていたら、ウソがあるというか。色んな人が色んな形で越雲龍馬のイメージを持っていると思うんだけど、間違い無くこれも越雲龍馬っていうか。透明で、いつも戦ってるからこそ、ものすげー優しくなれる時があるんだろうなー、っていう印象とうか。

越雲 うーん。。

黒田 でもなんか、自虐的な事も言うじゃない。“俺はみんなに嫌われてるんで”みたいな。

越雲 あぁ、そうですね。いや、間違いないですね(笑)。

黒田 ハハハハハ(笑)いやいやいや。そーいう、越雲って毒ばっかり吐く、いつもピリピリしてるみたいな印象しか持ってない人は、ビックリしちゃうかもしれないけど。

越雲 あぁ。

黒田 こういう自分も受け止めて、ちゃんとアウトプットするようになったんだ、っていうところでなんか感動したけどね、俺は。

越雲 いや僕もビックリしました。これは自分の作品じゃないのかもしれないっていう風に疑って...。まだ疑ってるくらい。なかなかこういう曲書けるタイミングってないんですよね。

黒田 ライブで毎回やってくんすか?これ。

越雲 いや、ほんとにそういうのやりたいな、って思った時しかこの曲は出来ないです。

黒田 そうだよね、そんな感じする。

越雲 まだ、実際2回くらいしかやってないですね。

黒田 あ、そーなんだぁ。

越雲 このイメージでもし自分の事を理解されてしまうと、ヤバイですよね。

黒田 でも逆に、それだけの大作だし名曲だと思うんだけど。ホントに気が向いた時にやってこそ、めっちゃ伝わる曲だなーって、32歳の越雲龍馬ファンは思ってます。

越雲 (笑)。この曲、6〜7分あるので。

黒田 え、そんな長いの?

越雲 それをセットリストには入れたくないですよね。もっと沢山曲やりたいし(笑)。

黒田 まあね(笑)。でもこの曲聴けた時は、みんな優しい気持ちになって帰ってくれるんだろうな、っていう。

越雲 優しいですかねぇ、、ただ悲壮感を歌ってるだけだと思うんですけど。

黒田 なんかでも、“そういう越雲を見れて” だと思うんだよね。楽曲を聴いて、っていうより。

ーーー

 

08. post

黒田 最後にこの〔post〕を落とし込んだのは。

越雲 うーん、ま、優しい気持ちで終わって欲しくなかったんですよね(笑)。

黒田 ハハハハハハハ(爆笑)。

越雲 だし、単純に僕こういう音楽が好きなんですよね。

黒田 俺も好きよ。

越雲 ノイズミュージック大好きで。

黒田 うんうんうん。

越雲 だって、あの曲〔言葉は風船〕で終わるわけにはいかないだろう、って思ったんですよね。それはそれで終わる美しさもあるとは思うんですけど。

黒田 でもそれは本来のpollyじゃないもんね。本来の越雲ではないし、さっきも言ったけど。バランス取るの上手いね。そういう意味でのpostな訳ね。

越雲 ま、postの意味は個々皆さんに解釈していただいて。

黒田 あー、なるほど。

越雲 はい。

ーーー

 

黒田 と言う事で『哀余る』。全8曲入り。これフルアルバムでも良かったね。

越雲 フルが良かったんですよ、ホントは。フルアルバムでも出来る曲数はあって。他にも聴かせたい曲は沢山あるし。今年中に、何かしらのフォーマットで小出しに出来たらいいなっていう。目論見...

黒田 なるほど。

越雲 今の僕のマインドが凄い冴えてるんですよ。お客さんもこういうの好きだと思うし、やってても気持ちいい音楽をやっと見つけたので。

黒田 うん。

越雲 なんだろな、今の風潮が悪いとは言わないですけど、そーゆーのもうそろそろ辞めようよ、っていう提示を。なんか美学がないんですよね、うるせぇんだよな聴いてて、っていう音楽を辞めようと思ってて。

黒田 フフフ。なるほど。

越雲 音を分解してったら確かにうるさい音楽をやろうと思ってるんですけど、じゃなくてこう、“越雲的美学”を今後提示していければ、カズさんも失禁するんじゃないでしょうか(笑)。

黒田 ハハハハハハハ。失禁させてください(笑)。

越雲 がんばります。

黒田 うん。いやでもほんとに良いアルバムでした。

越雲 ありがとうございます。


 

越雲 そういえば最近ラジオにハマってて、ラジオやりたいんですよ。すごい好きでずっと聞いてて。もうそろそろ、のぶさんも東京から来るの大変だろうし、おのっちさんも仕事で疲れてるだろうから、(MCを)交代する時期なんじゃないですか?(笑)

黒田 ハハハハハハハ(爆笑)。なかなかえげつない番組になると思うよ。毒吐きまくるっていう。

越雲 音楽的な番組がもっとあっていいと思うんですよね。楽しい番組は世に溢れてるので。じゃなくて本物の人間の持ってるものを出す番組があってもいいと思ってたんですよ、ラジオ聞いてて。みんな楽しいし、嘘くさいのばっかなんで。

黒田 なるほどね。

越雲 ラジオやりたいですねー

黒田 俺も自分のこの音楽、フィッシュマンズもそうだけど、音楽情報の引き出しを作ってくれたのは全部ラジオなんで。小学校の時に聞いてたNHK FM ミュージックスクエア。ラジオで、“日本人の音楽ってこんなにいっぱいあるの?” “ランキング入ってないけどめちゃくちゃいいじゃん!”みたいな。

越雲 うんうんうん。

黒田 こういう会話を越雲くんのファンが聞いてね、新しい音楽、さっき言ってた“ブラッドなんちゃらバレンタインって何だったっけ?”って調べてそこから広がってって、色んな音楽聴いてくれる人が増えると楽しいなとは思うよね。

越雲 そうあれたらいいですけどね。

黒田 情報溢れてるからね。SNSですぐに聴けるけど、散漫にはなるよね。

越雲 ラジオで聴くって、面倒くさいじゃないですか。でも良い意味で面倒くさい事をして聴く音楽って、余計入りやすいと思うんですよね。

黒田 あー。それはレコードにも通ずるところありますね。

越雲 面倒くさい作業を怠り過ぎてるんですよね。僕も含め。

黒田 なるほど。そういう意味でも。越雲龍馬のスリップストリームが今後…(笑)。

越雲 いやー、難しいんじゃないですか(笑)。

ーーー

 

黒田 いや、結構しゃべったね。

越雲 そうですね。

黒田 インストアやる時には、観に行きます。

越雲 来るって言ってもこないじゃないですか、カズさん(笑)。

黒田 俺、行ってない?

越雲 いや、2回ぐらいあるんですよ。俺の弾き語り来るって言って...

黒田 弾き語りホント観たいっすわ。

越雲 前、流れっちゃった、マツガミネでやりたいんですよね。

黒田 やりましょうよ。

越雲 ホントにいいんですか。SHIT HAPPENINNGばっか出てて。なんか俺ら出してくんない(笑)。

黒田 そんな事ないでしょーが!(笑)やりましょう。

越雲 是非!

黒田 おねがいします!

 

polly 『哀余る』
2nd mini Album 2016.07.13 Release

01.沈めてくれたら
02. Addict
03.ひとのよう
04.堕ちていく
05.哀余る
06.ふつうのせいかつ
07.言葉は風船
08. post

UKDZ-0177 ¥1,800+tax
DAIZAWA RECORDS / UK.PROJECT



polly http://www.polly-jp.net/

Live Information
ART-SCHOOL&THENOVEMBERS presents「KINOSHITA NIGHT×首」
2016.07.10 恵比寿LIUQID ROOM

セカンド・ミニアルバム「哀余る」発売記念イベント
2016.07.24 宇都宮ショッピングモールベルモール内カリヨンプラザ
2016.08.21 Zher the ZOO YOYOGI

UKFC on the Road 2016
2016.08.16 新木場STUDIO COAST

道玄坂異種格闘技戦vol.85
2016.08.22 渋谷La.mama

RADIO BERRY ベリテンライブ2016
2016.08.28 HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2

代沢まつり<DAIZAWA RECORDS 15th Anniversary for the Future>
2016.09.16 HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2
2016.09.17 LIVE HOUSE HOOK SENDAI
2016.09.22 大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
2016.09.23 名古屋 APOLLO BASE
2016.10.04 SHIBUYA CLUB QUATTRO


CALENDARS http://www.calendars-web.com/

Live Information
HOME TOWN -Utsunomiya KAIWAI-
2016.08.11
HEAVEN'S ROCK Utsunomiya/Utsunomiya HELLO DOLLY/Utsunomiya KENT

RADIO BERRY ベリテンライブ2016
2016.08.22 HEAVEN’S ROCK宇都宮VJ-2